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特別講義
フランク・ロンドン氏 国際学部特別講義&ライヴを開催しました

 クレズマー、それは東欧のユダヤ人のあいだで結婚式などの儀礼の際に奏でられていた音楽を起源に、今も世界中でさまざまな音楽と出会いながら繰り広げられている音楽です。クレズマーの1980年代後半におけるアメリカでのリヴァイヴァルと、その後のグローバルな展開を象徴するミュージシャンで、グラミー賞を受賞したバンドKlezmaticsの創立メンバーでもあるフランク・ロンドン氏を迎えての特別講義とライヴを、2017年5月15日(月)に本学講堂で開催しました。午後の特別講義は、私が担当する「共生の哲学I」の一環として、夕方のライヴは、私のゼミの一環として行ないました。ロンドン氏は、クレズマーをはじめとする移民音楽の研究に取り組んでおられる松山大学経済学部の黒田晴之教授のご尽力によりお招きすることができました。
 特別講義は、黒田教授からクレズマーへの導入となるお話をいただいた後、ワールド・ミュージックのブームに乗ったクレズマーのリヴァイヴァルを見つめてきた音楽批評家東琢磨氏が、ロンドン氏にインタヴューするかたちで行なわれました。遣り取りの前に、ロンドン氏のトランペット独奏により祈りの歌が奏でられ、続いて東氏の問いに答えるかたちで、東欧ユダヤ人の言語であるイディッシュとクレズマーの結びつきや、アメリカでの他の音楽との混淆による音楽の変化などが、ディアスポラ(世界各地への離散)を生きるユダヤ人の二重の生活とともに語られました。お話のなかでは、世界中のさまざまな音楽と接触しながらグローバルに生成するなかで、東欧ユダヤ人の文化に由来する特殊なものの普遍性を体現していく、ロンドン氏のクレズマーの特徴も示されました。ショアー(ホロコースト)の記憶に向き合い、この言い表わしがたいものを歌う可能性を追求する、みずからの音楽の使命にも触れておられました。
 夕方のライヴは、日本でいち早くクレズマーの魅力を発見し、それとストリート・ミュージックとの融合を図ってきたバンド、ジンタらムータとの共演により行なわれました。結婚式の踊りに使われた音楽をはじめ伝統的なクレズマーのほか、実に多彩な曲が披露されましたが、なかでもかつて美空ひばりが唄った《お祭りマンボ》の演奏は、ロンドン氏とジンタらムータの出会いを象徴するものだったと言えるでしょう。心の奥底からの祈りを、驚くほどの振幅で聴かせる曲もあれば、会場を祝祭的な興奮の渦に巻き込む激しいリズムの音楽もありましたが、どの曲からも聴く者の魂を揺さぶる力が感じられました。それは、ロンドン氏のトランペットの音の力強さに因るところが大きかったことでしょう。
 原曲がイディッシュの平和を祈る歌“Sholem-lid”が日本語の訳詞でプログラムの最後に歌われたことは、非常に意味深いことだったと思われます。学生や教職員のみならず一般の参加者も、他者とのあいだに生きることと、そこにある愛とにじかに結びついた音楽を、心から楽しんでいた様子でした。

文:国際学部 柿木 伸之

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