2005年から、東アフリカのケニア共和国でフィールドワークをしています。ケニアの南部に暮らすマサイの人たちが調査・研究の対象です。最初に興味があったのは、野生動物の保全と地域社会の開発の両方を同時に実現するという「コミュニティ主体」のプロジェクトです。そうした開発プロジェクトがどんな結果をもたらしていて、それについてマサイの人たちがどんなことを思っているのかを知りたかったのです。そうした環境保全や地域開発の問題に加えて、最近はマサイの伝統文化の変化や観光開発の影響、「マサイ・オリンピック」というスポーツ・イベントについても調べています。また、日本国内では隠岐諸島の海士町と熊本県の水俣に、定期的に通ってもいます。
この授業では、国際開発学の3つの柱とされる開発経済学、開発政治学、開発社会学の3つの学問領域について、それぞれの学問領域が「開発」というものをどのように考えてきたのかを学びます。学問領域が違うと、「開発」の意味も大きく変わります。そうした違いを理解することを通じて、一つひとつの学問領域の「狭さ」を自覚し、開発をより多面的に考えられるようになることを目指します。
この授業では、ノーベル経済学賞を受賞した経済学者が、具体的な開発の現場における自分の経験にもとづいて書いた本を読みます。この本を読むことで、これまでの国際開発の問題点と同時に、最新の開発経済学の考え方を学ぶことができます。それにプラスして、開発社会学者として長年にわたってフィールドワークを行なってきた立場から担当教員が、開発経済学者である著者の考えを批判的に検討します。国際開発学よりも具体的で学問的なテキストを用いて、「開発」を複眼的かつ批判的に考える力を身に着けることを目指します。
NPO法人「アフリック・アフリカ」に所属。国内の各種プロジェクトおよびタンザニア連邦共和国で展開している「セレンゲティ・人と動物プロジェクト」にかかわっている。
ヒトと動物の関係学会奨励賞 受賞
受賞対象活動名:研究発表(アフリカにおける牧畜民と野生動物の関係の変化)
表彰主体:ヒトと動物の関係学会
受賞年月日:2010年3月7日
日本アフリカ学会研究奨励賞 受賞
授賞対象活動名:著書(『さまよえる「共存」とマサイ──ケニアの野生動物保全の現場から』新泉社、2014年)
表彰主体:日本アフリカ学会
授賞年月日:2016年6月5日
書名 | さまよえる「共存」とマサイ ― ケニアの野生動物保全の現場から |
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著者 | 目黒 紀夫 |
出版年 | 2014年10月 |
出版社名 | 新泉社 |
書名 | アフリカ潜在力5 自然は誰のものか―住民参加型保全の逆説を乗り越える |
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著者 | 山越 言・目黒紀夫・佐藤 哲 |
出版年 | 2016年3月 |
出版社名 | 京都大学学術出版会 |